汚れなき人よ
こんばんわBeerです.
人の世話にばかりなって来ました.
これからもおそらくは,そんなことだろう.みんなに大事にされて,そうして,のほほん顔で,生きて来ました.これからも,やっぱり,のほほん顔で生きて行くのかも知れない.そうして,そのかずかずの大恩に報いる事は,おそらく死ぬまで,出来ないのではあるまいか,と思えば流石に少し,つらいのである.
実に多くの人の世話になった.本当に世話になった.
このたびは,ナベさんだけの事を書いて置くつもりであるが,他の大恩人の事も,私がもすこし佳い仕事が出来るようになってから順々に書いてみたいと思っている.今はまだ,書きかたが下手だから,ややこしい関係の事など,どうしても,うまく書けないのではあるまいかというような気がするのであるが,その点,ナベさんの事ならば,いまの私の力でもってしても,わりあい正確に書けるのではなかろうかと思うのである.それは,どちらかと言えば,単純な,快活な人間だからである.けれども,実在の,つつましい生活人を描くに当って,それ相応のこまかい心遣いの必要な事も無論である.あの人には,私の描写に対して訂正を申込み給う機会さえないのだから.
私は絶対に嘘を書いてはいけない.
とまぁここまでが太宰治の「帰去来」をパクったものですが,雰囲気においては真実に近いと思います.ただいつものふざけた文章のほうが書くのに疲れないのでやっぱりふざけて書きます.
ナベさんはかれこれ生誕から四半世紀.研究室の内外から信頼が厚く,皆に愛されています.この日記にも.に既に登場しています.
なつかしいなぁゼミ旅行.ゼミ旅行でのナベさんとの思い出は他にもいろいろありますが,一番印象的なのはこんなのです.
1日目だか2日目だか忘れましたが(一番印象的なのに?とか思わないで下さい),夜の宴会で,ちょっとしたいざこざがありました.でナベさんが気分を害され,またケッコウ飲んでいたので,とりあえず心身ともに落ち着いていただこうとコーヒーをご馳走したんです.
しきりにコーヒーの代金を気にするナベさんに,いやイイですって,安いものですから.とりあえずゆっくりしましょうよ.などと半ば強引に説得して,みんなで和やかにコーヒータイムと洒落込みました.そしてコーヒーを飲み終わった後のナベさんの笑顔を,僕は大切にしまって置きたいと思っています.
「ホントにこのコーヒーおいしかったよ」
綺麗なものでした.
またナベさんといえば,僕の学科のソフトボールの祭典DG杯で中心的役割を担っていました.多分がDG杯だったんだと思います.
DG杯に向けて,運動神経のカケラもない僕に,ナベさんは懇切丁寧にボールの投げ方を指導して下さいました.その甲斐もあり,多少はまともにキャッチボールが出来るようになりました(え〜?とか言わないで下さい).でも結局僕は守備に出なかったので骨折り損だったのですが.
さてDG杯ですが,一回戦は引き分け時間切れで,ジャンケンに勝敗が委ねられることとなりました.そこで,誰がジャンケンするだぁ?という問題になったんですね.
「やっぱりココはナベさんしかいないでしょう!」
誰かが言いました.嘘です.僕が言いました.すると他のみんなも「おお!」,「お前しかいないわ!」,「頼むぞ!」
やっぱりナベさんしかいません.僕の人選は間違っちゃいませんでした.
まぁジャンケンなんて所詮時の運.結果がどうあれ問題となることはありません.試合後,ファミレスで大いにはしゃぐナベさんに,オトコとしての闊達さというものを教えられたのでした.
お酒好きな僕は,ナベさんと飲んだ事も少なくありません.飲みの場でナベさんは,持ち前の包容力で酔っ払いの戯言・暴言を吸収します.
僕なんぞは飲むと,洒落や冗談でなく本当にダメ人間になってしまいます.赤ら顔で,ただ世話に成りっ放し,身のまわりの些細の事さえ自分でしようとはしなくなってしまいます.そんなときにナベさんが隣にいると,
「(煙草の)灰が落ちるよ」
「ビール(口から)こぼれとるから」
「ホントにもうBeerちゃんは」
など,全ての(人間としての)立ち振る舞いをまかせ,僕はただただ酔っ払うだけでした.
もうナベさんも卒業ですから,これからはあまり接する機会が無くなるのでしょう.けれども,僕自身は以前と少しも変わらず,やっぱり苦しい,酔っ払いの生活を続けているのですから,あれこれ指図をしていただかないと,なんだか淋しいのです.
昨日は去年の研究室メンバーで卒業祝いの飲み会がありました.その席でナベさんは,酔っ払いの僕に就いてやや安心なさっているようで,大きな間違いは犯さないと思っているのだろうと見受けられました.
というのも僕に付き合って,かなり飲まれていたからです.そしてだんだんと,僕に本心を言ってくれるようになりました.
酔っ払っていた時の記憶を文章にするのは僕には至難のワザですので,またダイジェストでいきます.
僕がつくね(?)を食べようとするのを見て
「もっとガツガツ食べたいなぁ!」
「ゴハンが食べたい!」
お土産のチョコレート,僕の分も食べた.
するとかしないとかどうこう.
「背中が見えるよ」
「この日記見てるんだよ」
「ホント勘弁してぇ」
ナベさんは淋しそうに微笑んでいました.僕はたまらない気持ちでした.みんな僕の所為なんだ.僕の悪酔いが,ナベさんの寿命をたしかに十年縮めたのです.そうして僕ひとりは,相も変わらず,赤ら顔.